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EBSCO社フォーラム「アメリカにおける図書館関連テクノロジーと大学図書館の現在」2016/10/24

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もう半月がたとうとしていますが…。あのLibrary Technology Guides: Documents, Databases, News, and CommentaryのMarshall Breeding氏が来日するということで参加してきました。

イベントの概要ページは以下です。
EBSCO Publishing

講演概要

図書館システムのトレンドについて

まず、総合司会のMarshall Breedingより図書館システムのトレンドとして、Library Services Platform(以下、LSP)、Discovery Service、Open Sourceの現状について簡単な説明がありました。
LSPについては、Breeding氏の昨年のレポートを下敷きに紹介記事を書いているので、その2章を読んでいただければ。*1
Discoveryは従来のOPACで対象としてこなかったArticleレベルの情報やWebコンテンツなどを対象とした検索サービスといった程度でした。Open Sourceへのつなぎで、Bento styleのユーザーインターフェイスについても紹介がありました。
*2
Open Sourceの現状では、ソフトウェアライセンスではなく、データ移行やユーザートレーニング、ホスティングなどサービスの対価をえるビジネスモデルが展開されていること、図書館が利用する際にもテクニカルスタッフが必要だが、オープンソースの商用サポートを利用することによって、必ずしも増員する必要はないとのことでした。(北米ではという前提条件がつくと思いますが)

Caltech Library-Supporting 21st Century Research

Kristin Antelman氏(Caltech Library)によるOpen SourceのLSPとEBSCO Discovery Service(EDS)の導入について。

  • ILSやERMS、複数のリポジトリを、TIND - CERN spin-offというオープンソース図書館システムに統合
    • 導入にあたっては、北欧の| Invenioのサポートを受けている
    • データリポジトリもTINDを利用して運用開始予定
  • PlumXを利用した研究成果分析やDiscoveryの利用状況調査を実施中、以下のようなことが明らかになっている。
    • 情報検索についてEndNoteのような文献管理ツールへのニーズ
    • 既知検索がほとんどで主題検索の頻度は低い
    • 最新の研究動向に把握しつづけることへのニーズが高い

リポジトリでは、図書館システムと外部システムのAPIによる連携が行われており、GitHubなどから図書館を経由せずにデータアップロードが可能といったことも質疑で述べられていました。

まだ、開発中と言うことですが、TINDのOPACもシンプルでなかなかまとまったデザインですね。
'library' - Search Results - Caltech Library Catalog
紙の資料はほとんど廃棄しているということが原因かは不明ですが、ファセット機能はほとんどありませんが。Course Reservesも検索できますね。

Discovery at The University of Chicago

JAMES MOUW氏(The University of Chicago Library - The University of Chicago Library)情報検索環境の構築について。

  • EDSを導入し、Webサイトではシンプルな検索窓を提供している
  • より専門的なニーズに応えるために右側にクイックリンクとしてデータベースリスト
  • ILL用のOPACが2つ存在するなど検索システムの整理が必要
  • システムはオープンソースのLSP、Kuali OLEを利用しているが、FOLIOへの移行も検討
  • あるSTM出版社でシカゴ大からのアクセスのリファラーを分析すると、80%以上がGoogleもしくはGoogle Scholarからの利用
    • リンクリゾルバからの利用は10%程度
  • Google Scholarは専門的な研究ツールではないといった研究成果があっても、ユーザー行動はかわらないので、それを踏まえた情報検索環境を構築する必要がある

質疑のなかでは、以下のことが述べられていました。

  • ユーザーのための情報検索環境の構築では、閲覧端末や学内からか学外からかといった利用環境にかかわらず、等しくアクセスできるような環境を構築するよう心がけている
  • ユーザーにとって図書館のツールは使いにくいものもあり、講習会などトレーニングの機会を作っているが、そもそもトレーニングが不要なツール

Discovery@NYU Libraries

Nadakeen Tempelman-Kluit氏(New York University Division of Libraries
New York University Libraryの情報検索環境について。持ち時間30分のところ15分くらいで終了。

  • MetaLibからEDSへ移行
  • 図書館WebsiteでOPACの利用は42%に過ぎない
    • 質疑で何に対する42%かという質問がでたが、ちょっと回答が理解できていません。OPACへのアクセスリファラーで図書館Webサイトの占める割合ということでいいのかな…
  • ユーザーの情報検索はGoogleGoogle ScholarWikipediaであり、図書館ではない
  • ユーザーインタビューを通して図書館のユースケースを収集している
  • 図書館のUIでおこりがちなミス
    • 文献を見つけてもアクセスの部分でつまづく
    • 検索時のファセットが活用されない
    • 認証方法でが複雑でユーザーが挫折する

A New Chapter in Library Technology

Tony Zanders(EBSCO)大学図書館からEx Librisを経て、現在はEBSCOのVice President。FOLIO - The Future of Libraries is Openの紹介とコミュニティへの参加の呼びかけ。

  • 図書館関連の技術が以前より細分化されている。
  • 一方でソフトウェアの設計やホスティングは簡単になり、コストも下がっている。
  • FOLIO-オープンソースのLSP
    • 非エンジニアの図書館員でも是非コミュニティに参加し、アイディアや意見を述べて欲しい
    • プラットフォーム上の規約に沿って開発することで、サードパーティのアプリでも共通のUIが提供可能、iPhoneアプリの開発イメージ
    • ソフトウェアそのものは完全に無償、ホスティングはEBSCOがサービスとして提供を検討している。日本にもデータセンターを設置を計画
    • 現在ソースコードを公開し、2018にver1.0やアプリのマーケットプレイスを公開予定
    • 各国の事情にあわせたローカライズの必要があるので、ぜひ各国のベンダーと協業していきたい
    • Special interst Groupsという形で日本についても議論をする場を作りたい。

質疑では、FOLIOのナレッジベースとしてEBSCOのものを利用するのかGOKbのようなオープンなものを利用するのかといった質問に対して、現在コミュニティで議論をしており、日本からの情報提供なども含めて参加して欲しいとのことでした。また、オープンソースのシステムを導入するメリットとしては、コストダウンそしてカスタマイズの柔軟性が挙げられていました。

雑感

国内の主要な図書館システムベンダーもおおむね参加していたようです。
昨年、ProQuestとExLibrisの買収*3が発表された際に、EBSCOの動きについてカールグラント氏がInnovative社など図書館システムベンダーの買収を予想*4していましたが、オープンソースというアプローチで図書館システムに手を広げてきました。
今後はEx Libris(ProQuest)、EBSCO、OCLCの3社による競争ですね。

おなじくオープンソースのLSPであるKuali OLEはFOLIOと合流したプロジェクトになるのかな。2016年9月に設立されたOpen Library Foundation の支援プロジェクトとしてFOLIO、OLE、GOKbが挙げられています。*5シカゴ大のOLEからFOLIOへの移行というのもこれを受けた話なのでしょう。

言語・環境的に多くのローカライズが必要になるであろう日中韓の3ヵ国でこのイベントをやるということに、EBSCOの本気を感じました。
関心のある方はMLやSlackのチャンネルに登録してみては。
FOLIO - The Future of Libraries is Open