韓国の大学図書館では何が話題になっているのか

 韓国では年に一回全国大学図書館大会*1なるものが開催されています。今年は4月に開催されたようですが,年によって6月や8月に開催されているので,開催時期はまちまちのようです。参加者数は500名程度ということです。参加大学に公私の別はないようですので,韓国教育学術情報院(KERIS)という組織が主催になっています。また,企業の展示ブースなどもあるようです。カレントアウェアネス-Eで2008年大会の様子が紹介されています。*2

 どんなトピックが話題になっているのか,2012年の大会のプログラムを抜き出してみました。

全体会

セレモニー的な内容を除ければ,以下のような講演・報告が行われています。

学術知識情報膨張の時代にふさわしい著作権ポリシー

講演者であるソウル大医学図書館の副館長がクリエイティブコモンズ・コリアの理事を務めているようです。また,韓国でのオープンアクセスの推進者ということでした。講演動画はYouTubeで公開されています*3

大学評価と図書館

講演者は韓国の新聞である中央日報の論説委員で,中央日報教育開発研究所所長という肩書きでした。

大学図書館の評価を見る視点:図書館サービスの評価(LibQUAL + TM)を中心に

図書館情報学研究者による報告です。

分科会

分科会は以下のような構成になっていました。これは2008年と同じ構成のようです。

  • 館・課長会議
  • 実務グループ討議
    • 整理
    • 収書
    • 相互貸借
    • レファレンス・閲覧
    • 電算
館・課長会議

「スマートラーニング環境での図書館の役割」・「大学公開講演会と学術情報を統合した知識情報の流通体系の構築」といった講演と自由討議が行われています。

実務グループ分科会

整理

テーマは日本のNII目録事例を通じた国内目録の現状分析です。主要な討議内容は

  • 日本の総合目録を活用した目録の作成方法
  • NIIの目録を適用した日本書の書誌品質向上
  • 今後の日本の総合目録の変化に伴う国内目録の見通し

の3つが挙げられています。

収書

テーマは海外学術資源の選択と利用のプロセス事例です。主要な討議内容は

  • 国内でのグループ:専攻図書選定基準と運用方法
  • 国外でのグループ:代理店の選定基準
  • 寄贈図書グループ:寄贈資料の処理
  • 年契と電子ジャーナルグループ:利用者サービスを有効に向上するための協議
相互貸借

KERISの相互貸借新規統合プラットフォーム(WILL)の運営状況報告がテーマです。主要な討議内容は

  • 新規の相互貸借の統合プラットフォームの改善要求事項の意見募集
  • 機関別新規プラットフォームを活用するヒントと使用レビュー、相互の意見交換
  • 機関別の海外相互貸借サービス事例とEDDS政策推進方案論議
レファレンス・閲覧

大学読書文化活性化のための読書治療事例がテーマです。

  • 図書館文化行事プログラムの拡大についてのご意見
  • モ​​バイル環境での専門サービスの発展の方向
  • 問題利用者とのアプローチと予防策

が主要な討議内容でした。

電算

スマート図書館の進むべき方向をテーマにしています。

  • スマートデバイスとソーシャルサービスプラットフォーム 、クラウドサービスとビッグデータの管理
  • スマート図書館サービスのグローバルトレンド,スマート環境での図書館サービスの議論事項の共有


これらの討議内容は翌日2日目のプログラムの中で,3分間の報告が行われるみたいです。
整理分科会でNIIが大きく取り上げられているのが,印象的です。報告内容などの資料がWebに上がっていなさそうなのが残念です。また,日本で同様のイベントがあったら,まず間違いなく取り上げられそうな「ディスカバリーサービス」「ラーニングコモンズ」「オープンアクセス」などが分科会に含まれていません。このあたりに日本の大学図書館との違いがあるのかなと思いつつ…終わります。



 

*1:http://library.riss.kr/schedule/schedule_01.jsp

*2:http://current.ndl.go.jp/e821

*3:http://www.youtube.com/watch?v=AYOUYgrUxIQ