新聞沙汰になったことなど

タイトルは思いつかず…。まさか大谷翔平ではなく、自分の名前を全国紙の一面で見つける日が来るとは思いませんでした…。というわけで記事公開のお知らせと記録のために、1年1ヶ月ぶりの投稿です。

以下の記事をあの坂東慶太さんとの共著で執筆しました。

大谷 周平, 坂東 慶太, 論文海賊サイトSci-Hubを巡る動向と日本における利用実態. 情報の科学と技術. 2018, 68 巻, 10 号, p. 513-519, https://doi.org/10.18919/jkg.68.10_513.

この号は、特集主査が昔からの友人ということやテーマがオープンサイエンスという偶然の面白さを感じるものでした。こんなコメントも。

投稿記事はオープンアクセスになっていますので、ぜひご覧いただければ幸いです。
Altmetric Attention Scoreはこちら。
https://www.altmetric.com/details/49067679?fbclid=IwAR0DHd0ivKx4pT3m6COm5Eu0_3HUhS0e0MFeWxX_0rarhYnU-ztTO-eSf34

2018年1月にEBSCOさんのAcademic Advisory Board Meetingで香港にお招きいただいたときに、日本からの参加者ということでご一緒したのが執筆の切っ掛けです。滞在中、学術情報流通に関連するトピック、MendeleyやORCIDなどについていろいろ教えていただいたのですが、その際にSci-Hubも話題となりました。Sci-Hubのことは当然知っていましたが、ログデータが公開されていることや、栗山先生が日本からの利用状況を報告されていることなどは、その時初めて知りました。

絶対に公開できない情報ですが、所属機関で何が利用されているのか、どれくらい利用されているのか、把握できるならしておきたいなというのが、私の関心のスタート地点でした。幸か不幸か、Sci-Hubのログデータには利用者の所属機関を明らかに出来るような情報は含まれていませんでしたが。
執筆にあたって印象に残っているのは、日本からの利用の20%をOA文献が占めているといること、分析プログラム(研究データ)の整理が上手く出来なかったことです。オープンアクセス・オープンサイエンスに関わっている以上、やらねばと考えていたのですが、上手くできたとは言いがたい結果になってしまいました…。

記事公開後に朝日新聞の野中記者からコンタクトいただき、11月12日にWebで公開された記事になりました。
有料論文に海賊版サイト 国内の不正入手、127万件:朝日新聞デジタル
有料記事のため本文は読めず、「琉球大学などの解析」とあるので名前出てるかもなぁくらいに軽く考えていましたが、まさかの全国紙一面でした…。((沖縄は新聞購読のほとんどを地元2紙が占めており、全国紙で朝読めるのは日経だけです。この日も紙の朝日新聞は午後まで手に入らず、聞蔵にお世話になりました。))
大阪版が一番扱いが大きく、1面・3面の記事です。他の地方では1面に圧縮した記事とのことでした。

大阪版3面にあたる記事
研究者を誘惑する論文海賊版 高騰する購読料、大学圧迫:朝日新聞デジタル

会員登録すれば読める無料記事
論文、「海賊版」から入手横行 本来は有料、国内127万件ダウンロード:朝日新聞デジタル

さすがに影響力が大きく、掲載されたその日のうちに全国紙1紙と地元紙2紙からコメントを求められ、大学の広報部署とやりとりしながら対応することになりました。うち1紙はすでに有料記事として掲載されています。(ペイウォール…)
有料論文を無料でダウンロード 海賊版が横行、琉球大など解析 | 沖縄タイムス+プラス プレミアム | 沖縄タイムス+プラス

毎日新聞のハゲタカジャーナルのように、学術情報流通の課題が広く認知される切っ掛けとなりそうで、記事にしていただきありがたいです。しかし、今回初めて新聞で取り上げていただいて、新聞記事にDOI(に限らず典拠情報)がもっと記載されるべきと感じました。紙面の都合で難しければWeb版だけでも。朝日新聞でも以下のような前例は既にあるんですね。
今世紀末、ビール価格2倍に? 異常気象で大麦に異変:朝日新聞デジタル

スウェーデンでSci-HubをブロックをしたISPがエルゼビア公式もブロックしたり、SPARC Japan セミナー2018「オープンアクセスへのロードマップ: The Road to OA2020」でもSci-Hubに関する言及がと、記事執筆後の動きもあります。また、既存データでも私の技術力などの問題で分析しきれなかったネタがあるので、スキルを上げつつ、また、続報を書きたいです。

最後になりましたが、海賊サイトの利用分析という悩ましいテーマにもかかわらず掲載に踏み切ってくださった、南山さんをはじめとする、「情報の科学と技術」編集委員会のみなさま、いつも的確なコメントでクオリティをあげてくれた林さん、データ集計の部分で基本的なことからきちんと指摘いただいた査読者の方(上手くコメント活かせなくて申し訳ありません…)、半年に渡り全体構想から分析のアドバイス、投稿関係の諸作業、投稿後のアウトリーチ活動とお世話になりっぱなしの坂東さん、本当にありがとうございました!*1

*1:ファーストオーサーということで、各紙私の名前が出てしまいましたが、坂東さんの貢献の方がはるかに大きく、絶対に私1人では形にできませんでした。本当にありがとうございます。