メモ:沖縄の著作権史

山田奨治. 日本文化の模倣と創造 : オリジナリティとは何か. 角川書店, 2002, 229p.
の沖縄の著作権に関する節が面白かったので、メモ。

切っ掛けは、Sci-Hubが話題になった際の岡部さんのこちらのtweetから。


こちらで紹介されている論文にも沖縄の著作権に関する記述があったことです。ありがとうございました!

沖縄の著作権沿革

沖縄の著作権法改正

罰金規定がドルに変更されていますが、もっとも大きな変更は二十八条の変更です。

改正前

第二十八条 外国人の著作権に付ては条約に別段の規定あるものを除く外本法の規定を適用す但し著作権保護に関し条約に規定なき場合には帝国に於て始めて其の著作物を発行したる者に限り本法の保護を享有す

改正後

第二十八条 非琉球人の著作権に付ても本法の規定を適用す

外国人が日本の本土人も含む「非琉球人」に替わり、条約に関する記述が削除されています。

  • 自分たちの著作物が保護の如何に関わりなく、一方的に外国の著作物を保護する片務的な内容であること
  • 国際著作権の保護は、諸外国の文化の導入を容易にするのではなく、困難にするにも関わらず、立法趣旨として真逆の説明が

なされていること
山田氏は、上記の2点から沖縄の立場の弱さを、「非琉球人」への変更により日本本土の著作物も保護するという部分から、日本復帰への憧憬を指摘しています。

沖縄復帰に伴う特別措置に関する法律

復帰直前の沖縄の著作権法では保護期間は30年でしたが、日本では1970年の改正により50年に延長されていました。
沖縄の復帰は1972年で日本の著作権法が出来ようされるまで2年間のギャップがあり、結果として沖縄ではパブリックドメインだが、日本では著作権保護対象という事例が生じました。例として、宮沢賢治梶井基次郎が挙げられています。そのトラブルを防ぐため、沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律の中で、本土で「情を知つて頒布する行為」は禁じられています。どうやって、「情を知つて」を判定するんだろと思いますが…。
また、「非琉球人」という枠組みがなくなり、それまで保護されていたソビエト連邦や韓国など一部の外国の著作物が保護対象から外れました。

所感

現在の沖縄の立ち位置も考えさせられる事例でした。その他にも治外法権著作権の関わりなど恥ずかしながら知らないことが多かったです。2002年の本ですが、著作権法改正が話題になるなか、今読んで良かったです。