濱田耕策先生最終講義「朝鮮鐘の文化史」

学部時代の恩師である濱田先生が今年度で退職されます.最終講義に行ってきたので,記録だけ.

九州大学-研究者情報 [濱田 耕策 (教授) 人文科学研究院 歴史学部門]
九州大学朝鮮史学研究室

先生の業績のなかで卒論のテーマを一時期朝鮮鐘にしようかと考えていたこともあったので,面白く拝聴しました.西日本にはそれなりの数の朝鮮鐘があり,福岡県の重要文化財になっているものもあります.
秋月城跡出土の高麗鐘(県指定)| 朝倉市


濱田先生の業績で朝鮮鐘関係は以下のような論文があります.

CiNii 論文 -  新羅鐘銘の再検討-1-敦賀市・常宮神社所蔵の「鐘の記」と菁州蓮池寺鐘


CiNii 論文 -  現代日本語訳『新羅聖徳大王神鍾之銘』

最終講義の内容は,

  • なぜ朝鮮鐘なのか
    • 鐘をめぐる日韓交流史
  • 朝鮮鐘の基礎知識
    • 鋳造方法
    • 日本や中国の鐘との形態的な相違
  • 時代による変遷
    • 各時代の代表的な朝鮮鐘
  • 日本への来歴
  • 梵鐘の民俗
    • 男子希求譚
    • 戦争による焼失や金属回収令

特に面白かったのは,文化財の返還に関わるエピソードです.先述の論文を書いたのちに,韓国の文化財返還運動の団体からいろいろ問い合わせが来たそうな.
文化財の返還問題として,最終的にどこに落ち着くべきかは分かりませんが,(史料のすくない時代なのでなかなか難しいですが)歴史的な事実が一つづつ明らかになっていけばと思います.

濱田先生に目録のアルバイトを紹介して貰ったおかげで現在の職業についているので,大変感謝しております.
九大での26年の教員生活おつかれさまでした.今後の研究成果を楽しみにしています.

ライブラリーサイエンス専攻を卒業します

3月になって,2015年初エントリー.

口頭試問も公聴会も(無事かどうかはさておき)終わり,学位授与式を除いて概ね大学院関係のイベントは終了しました.

この3年間,学生としても職員としても中途半端だなぁと思うところばかりではあるのですが,よい経験ができました.大学院の授業を定期的に受講できたり,実験の目的をたててプログラムを書いたり,インターンシップで別の職場を体験したりという生活は楽しかったです.
ちょっと振り返ると,

  • 費用…入学金約28万,授業料約100万(3年間の長期履修だったため,6回に分割して支払い)
  • 勤務と授業…平日昼間も授業が行われるので,授業の行われる時間帯を外して勤務時間のシフトを組むという変則労働をしていました.(例:8時半から10時まで勤務,10時半から12時まで授業,13時から19時15分まで通常勤務),1年目に必修の授業を取り過ぎてしまったことと,通勤時間が片道1時間30分ほどかかることもあり,かなり体力的に厳しかったです.2年目後期から授業をうける必要が無かったことを考えるともうちょっとバランス良く取れば良かったかなと思います.ただ,現在は必要単位が40単位から36単位に減っているので,負担は減っています.

2年後期以降は,週に一度指導教員と進捗の確認と方向性の修正などを繰り返す感じでした.能力不足で実験がなかなか上手くいかず,修士論文の提出直前まで実験をすることになってしまいましたが….

経済的にも体力的にもそれなりに負担がかかるので,安易におすすめはできないのですが,テーマをもって課題に取り組み,それに対する指導なり助言が得られるというのはよい経験となりました.明確にやりたいテーマが固まっている方はチャレンジしてみると面白いのではないかと思います.また,あらためて大学の講義を受ける機会を得て強く感じたのは,事務職員が半期に一コマ程度でも勤務時間中に勤務として講義を受講するような制度があれば,職員のスキルアップにもつながり,また,大学院進学を選択するような方も増えたりするのではないかということです.(大学院で授業を受けていたときに比べて,MOOCsが普及し既にそういう役割を果たしている気もしますが)

3年間指導いただいた先生方,大学院関係や月一で沖縄に帰るという生活の中,快くサポートいただいた職場のみなさまと家族に感謝を.

修論の内容などについては,また改めて.

LSS関係のエントリ


最近のあれこれ - よしなしごと

連続講演会「ライブラリーサイエンスの現在」(第15回)記録 - よしなしごと

修論発表… - よしなしごと

後期開始 - よしなしごと

メモ:インターンシップ初日 - よしなしごと

ライブラリーサイエンス専攻1週目 - よしなしごと

九州大学に異動します. - よしなしごと

最近のあれこれ

英語によるプレゼンのリハーサルが終わり、わりと慌ただしかった2ヶ月が少し落ち着いたので、ここ最近のやったことなどを簡単に記録。

医学図書館に投稿

長崎大の松村さんと以下の記事を共著で投稿しました。

松村悠子, 大谷周平. ILL依頼データから見た長崎大学附属図書館医学分館における文献の需要 (特集 第20回医学図書館研究会・継続教育コース). 医学図書館, 2014, vol. 61, no. 2, p. 182–186.

内容は、以下の発表がベースになっていますのでご覧ください。
ILL依頼データから見た長崎大学附属図書館医学分館における文献の需要
医学図書館の次号刊行後にhttp://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/:NAOSITEにセルフアーカイブされると思います。

自分はあんまり貢献していないのですが、MeCabPythonを使った形態素解析と単語頻度の集計について書きました。データに基づく業務改善はやらなければと思いつつ、手をつけ切れていないのでとても刺激になりました。というわけで放置中の自館の貸出返却状況の分析をやらねば…。

CA-Eの原稿執筆

大谷周平.E1584 - 進化する学術レコードと変わりゆくステークホルダーの役割. カレントアウェアネス-E, 2014, No.263.
http://current.ndl.go.jp/e1584
カレントアウェアネス-E No.263感想 - ささくれ

OCLCのレポートの紹介です。http://www.oclc.org/content/dam/research/publications/library/2014/oclcresearch-evolving-scholarly-record-2014-a4.pdf

6月9日に依頼を受けて、7月10日に初校提出、2回の校正を経て7月24日に刊行というスケジュールでした。実際に割くことができた時間は、レポート読むのに1週間、執筆に1週間くらいでした。
多くの人に紹介するためにまとまった英文を読むということ、校正によって原稿のレベルを何段かあげてもらうということ、この2点を経験できたのはとても良かったです。執筆することでなんだかんだで自分が一番勉強になり、得をしたように思います。調査情報係のみなさま、どうもありがとうございました。

国際会議に投稿

9月に北九州で開催される国際会議で発表します。
IIAI International Conference on Advanced Applied Informatics (IIAI AAI 2014)
http://aai2014.iaiai.org/index.html

9月3日(水)
Extraction of Key Expressions Indicating the Important Sentence from Article Abstracts
Shuhei Otani and Yoichi Tomiura (Kyushu University, Japan) [ESKM-SS6:4]

3月10日にCFPがでて、5月7日に投稿・5月29日に採択・6月14日にCamera ready提出というスケジュール
でした。採択通知ではCamera ready提出日が7月20日となっていてのんびりしていたら、実際には1ヶ月以上
はやくて、慌てることになりました。(学会ページではちゃんと正確な情報が出てた…)
金曜日はこれのリハーサルでした。ひどい出来だったので、あと一月はこの準備という感じになりそうです。
こういう経験は大学院に進学しなければ、できなかっただろうなと思います。

気づけば修論提出まであと半年もありませんね…。

韓国の大学図書館では何が話題になっているのか 2014

韓国の全国大学図書館大会のプログラムが公開されていたので、今年もざっくりと紹介してみます。

昨年・一昨年分はこちら。

公式サイト
2014 전국대학 도서관 대회에 오신것을 환영합니다.
6/12・13の2日間、慶州での開催です。

全体会

  • 韓国の大学図書館の現状と対応策
  • NAVER 専門情報-学術論文データの共有と開放
  • 学術情報の開放と公開のためのLinked Data
  • 図書館資源の共有と協力 -北米の大学図書館の事例と現状を中心に-

分科会

管理者グループディスカッション

実務者グループディスカッション

整理部門
  • 資料組織化の最近の動向

主要討議内容

  • Catalogue2.0と標目業務支援事例
  • 図書館における標目業務の位相
収書/逐次刊行物

主要討議内容

  • 国内大学図書館の蔵書政策比較
  • 電子資料の利活用と評価法案
相互貸借
  • 協業のアイコン 相互貸借サービス : 江原大学校外国学術誌支援センターの事例

主要討議内容

  • 相互貸借(WILL) 費用政策変更及びサービス活性化の計画紹介
  • 海外学術資源確保のための EDDS 拡大方策

※韓国のILLについては、2012年に大阪大学の藤江さんがNIIでの実務研修中にまとめられている資料が参考になります。
韓国KERISのILLについて(PDF)

レファレンス・閲覧

主要討議内容

電算

主要討議内容

Linked Dataが大きな話題になっていることがうかがえます。昨年はMicrosoft、今年はNAVERとIT企業に基調講演を依頼していますね。
NAVER専門情報については以下のような記事を書きました。
メモ:NAVER전문정보(専門情報) - よしなしごと

NAVERではほかにもNAVER Bookcastというサービスも行っています。識人がテーマ毎の本をセレクトして紹介するというサービスですが、韓国の国立図書館の司書が月ごとに新刊を紹介するコーナーもあります。
네이버 북캐스트 : 네이버 매거진캐스트

その他、議論されている点では、標目が目録における議論の中心となっている点、大学図書館の地域開放について賛否が議論されている点あたりは、日本とちょっと状況が違うのかなと感じました。

2013→2014

ブログを2ヶ月放置していたら、大晦日になってしまったので簡単に今年の振り返りを。あとid:kitoneからプレッシャーが…。

業務

いろいろと図書室の引っ越し準備の具体化とシステムリプレイスが大きなトピックでした。
システムリプレイスは自分が直接担当ではなかったので特に何かをしたわけではありません。ただ、ベンダーの切り替わるリプレイス(NALISからE-cats)と就職してから始めてNALIS以外の図書館システムを利用することになって新鮮でした。やっぱりデータ以降などは多々トラブルはあったようですしまだ完了していない部分もありますが、分館で閲覧業務を担当している分には特に支障なく移行が行われたように感じます。担当されたみなさまおつかれさまでした。
引っ越し準備は来年も継続して、作業計画を立て、実際にラベルやタトルを貼ったりするのでしょう。140万冊の図書の引っ越し準備作業というのはなかなか出来る経験ではないので、どこまで見届けることが出来るのかなぁという気分です。
また、NIIのWebサービス担当者研修のファシリテータを経験させていただいのも反省は多いのですが楽しかったです。同じ研修でも受講生とやや運営に近い側で見え方やまたそこから得られるものが全然違うなぁと実感しました。グループの議論にどこまで関わり、そのあたりで引くべきなのかという配分が分からないまま3日を過ごしてしまいましたが、最終的には自分には思いつかないアイディアによる成果を聞くことができとても嬉しかったです。今年受講生として参加された方が今度はファシリテータとしても参加してみたいと感じてくださっていれば、自分としては成功だったのかなぁと思っています。

来年はとにもかくにも粛々と目の前の引っ越し作業などをこなしていくことになりそうです。あとは某職能団体の全国大会が福岡開催かつ、そのお手伝いをすることが濃厚な雰囲気なのでどう関わるべきかなぁと。

大学院

いつものことな気はしますが、今年は惑ったなぁという反省しか。
必修の授業負担は減り、和漢籍の目録やIRに関する授業などとりあえずの関心にそった授業しかとっていないので、そちらは面白かったです。ただ、本業である研究の方では方向性がふらふらしてしまい、前向きに取り組めない時期もあったなぁと反省です。最後の最後でやっと具体的に手を動かし、いろいろ楽しくできるようになりました。このまま、あと一年できっちり修論にまとめるというのが来年の最大の目標です。

課外活動

1月…図書館総合展 in くまもと
3月…大学図書館研究に論文掲載
7月…しぶ旅、医学情報サービス大会 in 沖縄で報告
8月…Code4Lib Japan カンファレンス
10月…東北からのお客さまの歓迎会2回、某松村さんの報告お手伝い
12月…某沖縄の私大で90分講義

ご一緒したみなさま楽しかったです、ありがとうございます!ご迷惑をお掛けした方どうもすみません…。
また、来年もどうぞ宜しくお願いします。

残りの2013年は、家族サービスしつつこの本を読みながら過ごそうと思います。
カーリルで開く

感想:図書館員のためのプログラミング講座

NIIのWeb担当者研修に受講生として参加した際に、お世話になった山本哲也さんの著作が刊行されました。

カーリルで開く
Amazonだと品切れ中ですが、hontoでは購入可能です。

山本さんは自分のグループのファシリテータではありませんでしたが、お願いして提案サービスのマスコットキャラクターをデザインしていただきました。

アカデみけ

掲載の許可とかいただいてませんが…。

さて、本書の内容です。
本当に始めてプログラミングを行う人を対象にしています。インストール、Pythonを電卓として使う方法からはじまります。プログラミングの基本構文や概念の説明後、実際の業務でもあり得るかもしれない状況として以下のような事例とそれを解決するためのプログラミングの考え方が示されています。

  • テキストデータの貸出履歴を集計(テキストファイルの扱いや基本的な構文の確認)
  • テキストデータから新着図書案内のWebページを生成(HTMLや文字コードの扱い)
  • 返却期限日の計算(標準モジュールの使い方)
  • 日報データの検索(簡易な全文検索

最後に作成したプログラムを組織で改良・維持していくためのコツや、発展的な内容を学習するための手引きがまとめられています。

挙げられている事例そのものは筆者ご自身も書かれていますが、Pythonを利用しなくともExcelなどである程度こなせるものがほとんどです。しかし、実際に数行から十数行のプログラムでどれだけの大きな効果が得られるのかということを実感できるものです。さらに組み合わせや発展的な内容を学習することで、Excelなどでは扱えない規模のデータや複雑な操作を実現のとっかかりとなるものです。

とても分かりやすくプログラミングを始めるのに必要最低限のことがまとめられています。プログラミングと聞いて身構えてしまわず、是非気楽に手にとっていただければ。ある程度の知識がある人にとっては、プログラミングの内容そのものには物足りなさを感じるだろうと思います。自分は仕事のなかでプログラミングやシステムとどのように付き合うのかというところで参考になる部分がありました。

個人的には

魔法のようなプログラムももちろん仕事を向上させる役に立つのですが、一向に魔法に見えない、ありふれた道具のようなプログラムもあってよいのではないでしょうか。そういったものが、自由に手直しをされながら、綿々と使い続けられていくようになるといいな

という部分に勇気づけられたので、恥ずかしがらずこれからも実際に手を動かしてコードを公開していこうと思います。

まえがきによると、本書は日本図書館協会とCode4Lib Japanのコラボから生まれたそうで、 「新着雑誌記事速報から始めてみよう ーRSSAPIを活用した図書館サービス」(牧野雄二, 川島斉著)に続く2冊目だそうです。今後も数タイトルが予定されているそうなので、期待して待ちたいと思います。

CiNii Books APIのJSON、クロスドメイン通信対応

2017/05/11 サンプルコードを少し修正


10月11日にCiNii Books の改修がリリースされました。
http://ci.nii.ac.jp/info/ja/index_2013.html#20131011-3
内容説明や目次の検索機能の提供や著者名ヨミの表示といった機能が追加されていますが、Li:d tech的に熱いのは、CiNii Books APIJSON対応やクロスドメイン通信への対応です。

クロスドメイン通信への対応

通常、Javascriptはセキュリティの問題から、異なるドメインのデータファイルへのアクセスは遮断されます。それを回避するためにこれまではデータの受け渡しをするためだけの別のプログラムを書くなどする必要がありました。今回の改修により、CiNii Books側でhttpヘッダに「Access-Control-Allow-Origin: *」という情報が追加されたことにより、そのような手間は不要になりました。

JSON対応

これまでデータの出力フォーマットはHTMLかRSSの2種類でしたが、JSON形式でも出力できるようになりました。JSONはHTMLやRSSに比べてよりプログラムで処理しやすいフォーマットです。そして、その中でもRDFのデータをJSONの文法に則って、Linked DataとするJSON-LDという形式で提供されています。*1
以下、CiNii Booksからタイトルに「高麗」というキーワードを含む図書のタイトルと所蔵館数を出力するサンプルです。

#coding:utf-8
import requests

baseurl="http://ci.nii.ac.jp/books/opensearch/search?"
query={"format":"json","title":"高麗","count":10}

r=requests.get(baseurl,params=query)
#for i in r.json()["@graph"][0]["items"]["rdf:li"]:#修正前
for i in r.json()["@graph"][0]["items"]:#レスポンスをJSONで受け取り、検索結果の一覧を取得
    print i["title"]+":"+i["cinii:ownerCount"]#検索結果の最初から順番にタイトルと所蔵館数を出力

#以下、出力結果
高麗:0
高麗野:4
高麗史:7
高麗史:52
高麗青瓷:2
高麗史:160
高麗史:5
高麗鏡 研究:4
高麗史節要:2
高麗犬:1

PythonのRequestsモジュールでCiNii Articlesのデータ取得 - よしなしごとをすこし修正したものです。このケースだと@graph要素直下が配列である必要はない気がしましたが…。

今回の改修でこれまでよりさらにCiNii Books APIを使用したプログラミング環境が整いました。ArticlesのAPIでも同様の実装を期待しています。

11月18日までCiNiiのアンケートが実施されていますので、是非日頃の感謝や要望を届けましょう。*2

https://portaltools.nii.ac.jp/cgi-bin/enquete/form/ciniiarticles_2013/
https://portaltools.nii.ac.jp/cgi-bin/enquete/form/ciniibooks_2013/

*1:JSON for Linking Data W3C勧告はまだ行われていませんが、一般に公開されています。JSON形式の上に@graphや@idなど語彙定義などが行われているようです。

*2:全件ダンプとか、ログの公開とか書きました…。可能な範囲で…